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日本サッカーには「資金」が必要だ。JFA宮本会長×小澤隆生氏が激論

2025.09.29

日本サッカーには「資金」が必要だ。JFA宮本会長×小澤隆生氏が激論

「日本のサッカーが強くなるためにはお金が必要。目を背けてはいけません」──。

サッカー元日本代表でJFA(公益財団法人日本サッカー協会)会長の宮本恒靖さんと、
ヤフー時代にPayPayを立ち上げたことで知られる実業家で、現在はJFA理事を務める小澤隆生さんが登壇するイベントが、2025年8月下旬、JFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」で開催されました。

ワークショップ型イベント「JFA BizDay」のテーマは、「サッカーを題材に、ビジネス発想を覚醒させよう」。イベント当日は事前抽選で選ばれたサッカーに関心のあるビジネスパーソンが集まり、両氏の熱い議論に耳を傾けました。
宮本恒靖(右)…1995年にガンバ大阪でプロサッカー選手としてデビュー。2011年の現役引退まで国内外のクラブで活躍し、日本代表としてワールドカップに2度出場。現役引退後はFIFAマスターに留学。2015年から古巣のガンバ大阪で指導者キャリアをスタートし、2020年にはガンバ大阪監督としてチームを準優勝へ導く。2022年にJFA理事、2024年3月からJFA会長に就任。
小澤隆生(左)…2003年に楽天に入社。2005年からは楽天野球団取締役事業本部長となり、プロ野球チームの立ち上げに尽力。2012年にヤフーへ入社し、代表取締役社長 社長執行役員CEOなどを務め、2023年9月に退任。2024年1月ベンチャーキャピタル運営会社BoostCapital株式会社を設立、宮本会長と同じタイミングでJFA理事に就任した。

ワールドカップ優勝には「お金を動かさないといけない」

「日本代表は過去最高に強い。しかし、その過去最高に強い日本代表を最大限に生かせているのか」

対談の冒頭、小澤さんは野球と比較して、サッカー界のビジネス面の課題を指摘しました。

東北楽天ゴールデンイーグルスの設立に携わった経験もあり、プロ野球に精通している小澤さんは、
「例えばプロ野球のパ・リーグもかつては観客動員には苦戦していました。しかし、2024年の観客動員数は約2万8,000人を記録しています」と指摘しました。

「チームで頑張ったからこその結果です。現状、女子サッカーは3,000人ほどの動員で苦しんでいます。そんな時代もあったよね、と言えるように、みんなの頑張りが必要なんですよ」

さらに小澤さんは業界全体の課題として、「サッカーというコンテンツを日本の中でどう展開するのか、世界に対してどう打って出るのか、ビジネス・文化の側面からも関わっていくことで、サッカー全体の強化につながる」と話しました。

また少年野球から甲子園、プロ野球、メジャーリーグと繋がっていく野球を例に挙げ、「サッカーも上手くいっていると思いますが、経済的にまだまだ。最終的にワールドカップで日本が優勝するためには、お金を動かしていかなければいけない」としました。

続けて宮本さんも「組織運営」の観点から、資金の必要性を指摘しました。

「若手選手や指導者の育成はもちろん、少子化の中でサッカーをプレーしてもらえるような施策、老朽化するスタジアムの改修・新設など、さまざまな課題を解消するために、やはりお金は必要です」

「現在、日本サッカー協会の収入規模は210億円ほど(2025年度の収入予想)。これを2031年までに1.5倍にしていきたいですね」

小澤さんは資金が潤沢であれば、選手だけでなく彼らを支えるスタッフの収入も上がり、結果的にたくさんの子どもたちが目指す業界になると話します。

「お金の話はどうしても嫌がられてしまう風潮があります。でも、日本のサッカーが強く、大きくなるためにはお金が必要なことは厳然たる事実です。目を背けてはいけません」

JFAに必要な人材とは?

資金に加え、両氏が「絶対に必要だ」と声をそろえたのが「人材」です。

宮本さんは「資金を獲得できる」クラブの経営者が必要だと指摘しました。

「海外クラブとの選手の移籍交渉で、潤沢な資金を獲得する。そうすることで選手がプレーする環境を整え、次世代の若手に投資して還元していくのが大切だと思います」

「さらにクラブで良い施策を打った人、交渉した人、チームを強くした人、そういう人たちが評価されて、正当な報酬がもらえる。そんなクラブ経営が理想ですね」

「JFAに増えてほしい人材は?」という質問に対して、小澤さんは「ガツガツした精神を持つ人」と答えました。

「JFA職員はやる気に満ちており、組織内は風通しも良くて開かれたカルチャー。爽やかで明るい方が多いが、違う言い方をすればおとなしい」

「今日のように金曜日の夜にご飯も食べず、このイベントに来ている皆さんのようなガツガツさが欲しいですね」と会場からの笑いを誘った。

宮本さんは、JFAに国際部が存在することに触れ「国際的な立ち位置も重要になる」と話した。

「語学だけでなく、いろいろな知識を持ち交渉に臨める人が多くなってほしい。
この部分が強くなれば、国際大会を日本で開催する、ということにつなげられる可能性もあります」

自分の会社が支えているという「誇り」

最後のトークテーマは「企業にとってのサッカーの価値」。

企業がサッカーへ投資するにあたって、どのようなリターンが得られるのか、というテーマでした。

小澤さんは「企業にとっての価値」について、「『自分の会社が、自分があのスポーツを支えている』という誇りが喜びを1つ増やしてくれる」と話しました。

「企業は本業のサービスでしっかり価値を提供しなければいけません。そのうえで環境や文化への貢献も求められています。

私がスポーツと関わってきた20年、スポーツに向き合うことで会社内のロイヤリティの高まりを実感します。

自分の会社がスポーツを支えている』という誇りが会社に所属する社員や、その地域に暮らす喜びを1つ増やしてくれる。そういう会社が1社でも多く出てきてほしいですね」

また宮本さんは「企業にとっての価値」について、その1つは“つながり”だとしました。

「直接日本代表と関わることも魅力ですが、それ以外にもJFAがハブとなって横のつながりも創出できる。これも大きな価値になると考えています」

トークセッションの後はグループセッションも開かれました。

各々が興味のあるテーマごとにチーム分けされ、「JFAがライトファンとの接点を深めるには?」「日本で女子サッカーをメジャースポーツにするには?」「日本サッカーがアジアで稼ぐためには?」などのテーマについて、参加者が議論しました。

最後は宮本さんと小澤さんを交えた交流会が実施され、イベントは終了となりました。

本記事は2025年9月26日(金)に、YOUTRUST Studioに掲載されたレポートの転載です。


イベントを主催したJFAより

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執筆:エディット/編集:YOUTRUST Studio/撮影:加藤 甫

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